Steer

3/32
1826人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
「……くッ!!」 「ちょっと……何よこれ!?」 此所は星界……地球の日本。 少年と少女は路地を駆け抜けていた。 「本当に何だよこれ……」 人通りのない裏路地。 少年と少女は魔法陣に追われていた。 「どうするのよリン!?」 逃げても逃げても追ってくる淡く黒に光る魔法陣。 暗闇でもなぜか分かるその黒色。 少年の前を走る少女は焦り苛立っているようで、後ろを走っている少年に度々なにか怒鳴っていた。 「はぁ……仕方ない」 「え……リン……? ちょっと――」 後ろで何か唱える少年に、少女は焦ったような表情で急いで振り返る。 「……俺は大丈夫だ。必ずまた会えるさ」 リンと呼ばれた少年が唱えた魔法は転送の高等魔術。 そんな少年の別れともとれる言葉を最後に、何か言う前に魔法陣に包まれ少女の姿は路地から消えた。 少年の周りは黒に光る魔法陣で逃げ場は見あたらなかった。 少年はもう逃げる事はせずに、足元に光り迫って来た魔法陣をただ見ていた。 そんな少年の行動を諦めたと判断したのか、魔法陣はそれ以上増えることなく、少年の足元で一層強い光をあげる。 眩い黒の奔流を後に、少年の姿と多数あった魔法陣はなくなり、路地はまた静かに暗くなった。 .
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!