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今、俺の目の前にあるのは真っ白な廊下が、5mほど。
一見、なんの変哲もなく見えるこの廊下もまた、先刻の部屋同様非常に多くのセンサーが内蔵されていて、
向こう側に送った転移者の遺伝情報や網膜パターン・歩き方や細かなクセを厳密にチェックしている。
そして、そのいずれかが許容範囲を超えていれば――俺は瞬時に、塵灰へと回帰してしまっているはずだ。
しかし、それもまた――本人であるのだから、まったく動じる必要性はなかった。
そのまま廊下の終わりまで歩き――今までの情報がパスとなって、三重にロックされた扉が、ゆっくりと開いた。
その先にあるのは、小さな部屋――家具などは一切なく、あるのは機械で出来た棺のような物体が一つ。
それは戦闘中の仮眠や、重傷者を緊急治療する時のメディカル・カプセルにも似ていたが――無論、そうではなかった。
これが俺を、3002年の時代へと転送させるための器具。
……もっともこれは仕官用のもので、大量に送り込む必要のある一般兵用のそれは、もっと簡素で大量にあるのだが。
俺はカプセル横のスイッチを押し、その蓋を開けて――中に横たわった。
同時に、カプセル内部のギミックアームが俺の両手両足を掴み、その脳波や
血圧を常にチェックする。
そして、俺がゆっくりと瞳を閉じた瞬間に――俺は、
どこかに放り出されるような感覚を覚えた。
それは、上空から飛び降りるような開放感にも似ていて――だが、そこに恐怖はなく――
瞼はぴっちりと閉じていて、何故か自分の力で開けることは出来ない。だが、俺は今確かに、時間を飛び越えていた。
その瞳の裏に、3002年の光景が――実際には、脳に直接送られた情報を整理する過程で発生したそれを確認する。
3002年。今より1330年昔の時代――人類は、50年周期で文明の繁栄と停滞を繰り返し、
それでも着々とその歩みは実りを結び、着実に進化をしていった時代。
人類は第一の夢である、外宇宙への第二の故郷の探索という大偉業こそ果たしていなかったものの、
その代わりに火星のテラフォーミング化を完了――人類達は、第二の地球を手に入れていた。
各国家間の、国境線という垣根の排除――地球連合という、新たな統一国家の誕生。
そして――その過程での戦いの中生まれた、汎用人型起動兵器『ヴァリアブル・アタッカー』は、
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