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先輩には二つ上の姉がいた。
先輩の両親は先輩よりもその姉ばかりに構っていた。
次第に先輩と先輩の両親の心は疎遠になっていった。
そんな時、先輩の姉が事故で亡くなった。
先輩の両親は心底悲しがり、こう言ったそうだ。
「なぜ祈が死ななくてはいけないのか」
「なぜ叶ではないのか」
叶(かなえ)とは先輩の名前だ。
「結局の所、私の価値は邪魔な物でしかなかった」
先輩は俯いたままでそう言った。
「どれだけ頑張っても、両親に付けられた価値は覆せない」
だから先輩は自分の価値は他人が決める、と言ったのだ。
しかし、それはあまりにも早計だ。
「先輩。先輩は邪魔な物なんかじゃないですよ」
「いいえ、邪魔な物なのよ」
「価値を付ける人間が変われば、当然その価値も変わります。頑張れば頑張っただけ評価してくれる人がいます」
「でも、私は両親に邪魔者扱いされてしまった」
「それは先輩の両親の評価です。僕から見た評価は違います。両親の評価が絶対じゃない。誰の評価も絶対じゃないんです。もちろん、自分の自己評価も含めて」
僕は先輩と並んで立った。
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