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「アレは傑作だったな」
彼は笑う。
「人の失敗を笑うのは良くないと思うなぁ」
力なく反抗してみるが、いかんせん相手は失敗なんてものに縁の無いような人間なものだから、さしたる意味は無かったのだろう。
「いや、すまんすまん。しかしな、別にお前が悪いわけではないだろう?」
「私のせいだよ」
陸上の大会。大会プログラムの最後。リレーの第三走者。バトン渡しのミス。失格。
「あの時私が落とさなかったら、1位通過できてたはずなのに………」
「確かにそうかもしれないな」
夕焼けのグラウンド。うずくまる私へ振り返り、彼は続ける。
「確かにできたかもしれない。けど、そうじゃないかもしれない」
私服姿の彼は一つ上の大学生だった。
「何が起こるか分からないだろう?」
「そうだけど………」
タメ口なのは彼と私が幼なじみだからだ。
「お前がミスをした所で誰もお前を責めたりしないさ」
「そうだけど………」
彼は失笑をしてから私の隣に腰を降ろしてもう一度失笑した。
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