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「確かにお前は失敗した。だが、それは失敗じゃないんだ」
どういう事なのか私には分からなかった。
「お前が失敗したと言う事は、失敗じゃないのさ」
「そういう事。まぁ、失敗しなさそうな貴方には分からないでしょうけど」
「お前、もしかして俺が完璧に近い人間だと思ってる?」
「違うの?」
私の中のイメージでは彼は完璧な人間で何でもこなす凄い人だった。そう、私なんかが届くはずもないくらいに凄い………。
けれど、彼の返答は、
「ぷっ……おま、アホか……くくくっ………」
笑いだった。
「あのな、人間完璧になんてなれないの。わかるか?考えて見ろよ。どんな天才でも失敗はするぜ」
つまり、彼も失敗をすると言う事だ。
私は、心底驚いた。
絶対に失敗なんかしない人間。私の憧れでもあった彼が失敗をする。
「俺やお前の長ったらしい人生の中、失敗なんてのは通過点でしかないんだよ」
「通過点?」
「そうだ。どれだけ頑張っても失敗する時は失敗するのさ」
「そうかな」
「そうさ。例えば言おう言おうと思ってる内に言えず終いになるとかな」
彼の声と表情には自嘲が混じっていた。
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