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「俺も良く失敗したものさ」
「………嘘?」
「だと思うか?」
私は首を縦に振った。
「俺はそこまで良く出来た人間じゃない。告白すら出来なかったんだからな」
「いたんだ………好きな人」
「まぁな。ともかくだ」
と、彼は立ち上がり、
「今回の失敗は必ずお前の為になる。悔やむことはない。悔やむ暇があるなら、練習でもしてろ」
「ごもっとも………けど」
私も立ち上がって彼と並ぶ。
「私はそこまで強くない」
「俺もそんなもんだ。人間誰しも強くない。だから支え合うんだよ」
私は頷いてグラウンドに目を向けた。
「成功の裏には数十回の失敗が隠れている。たかだか一回の失敗がどうした。悔やむのは百回失敗してからにしろ」
「貴方は強いね。考え方が」
「いや、言い訳だ」
「そう………」
私はもう一度彼に向き直る。
相変わらず彼の表情には自嘲が張り付いていた。
「ま、要するに気にすんな、って事だ」
「うん」
「ふむ。そうだな、じゃあ俺からささやかながらプレゼントでもくれてやるか」
「え?」
と言った時にはもう遅かった。
少しの沈黙の後、彼が口を開いた。
「これが、俺が出来なかった事だ。しなかった事がこの学校での心残りだった」
その後彼は告白の常套句を口にした。
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