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[幸村夢/甘]
『迷った…』
方向音痴の私は城下に行って帰るだけでも道に迷ってしまう
もう空は紅から青に染まり夜を連れて来ようとしていた
『佐助…幸村様…』
道なりに歩いているとぽつぽつと雨が降り出した
大雨にならないうちに近くにあった小屋に入った
『暗い…』
小屋にあった暖炉に明かりを燈した
雨はぽつぽつからザアザアと大雨に変わっていた
この様子じゃ明日まで帰れないかも
そんなときピッカッと空が光った
『や…っ』
そして少ししてからゴロゴロと音がなる
何度も不規則に鳴りつづける雷に私の体は震え、目から涙が流れる
雷自体嫌いだけど夜の雷は一番嫌い
親に捨てられたあの日を思い出すから…
私は親に捨てられ今は亡き昌幸様に拾われ幸村様直属の女中になった
最初の頃はいつも交互に昌幸様と幸村様の御部屋に行ってたっけ
雷の日は幸村様が私の部屋に来て……
「雛!!大丈夫でござるか!?」
『幸村、様……』
「大丈夫でござる…某がついているでござる」
背中に回された手で優しく撫でてくださってそれがすごく落ち着いた
眠りについた
『んっ…』
「起きられたか…」
目が覚めると間近に幸村様のお顔があった
多分二人ともあのまま寝たのかな
「どうされた?」
『…いえ、ただ昔を思い出してました』
────……
『ふぇっ…昌幸さまっ…弁丸…さまぁ…』
「雛殿!!だいじょうぶでござるか!?」
『弁丸…さまぁ!!』
「だ、大丈夫でござる…それがしがついている…」
『はい…弁丸さま』
────……
『昌幸様がいないときはよく、幸村様が…ふぁ…』
「眠いならまだ寝ていてくだされ」
『はい、幸村様…』
私はまた、幸村様の腕の中で眠った
「この寝顔だけはいつまでも変わらぬな…」
そんな幸村様の声が聞こえた気がした
END
甘というかほのぼのだな(・ω・)
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