63人が本棚に入れています
本棚に追加
[雲雀夢/悲甘]
"必ず帰ってくるよ"
そう言って出て行った恭弥を待つこと10年
今だ連絡がない
恭弥を忘れた日なんてない
毎日不安で不安で仕方がない
不安と悲しみが私の中で渦を巻く
『早く帰ってきて…』
もうこの言葉を何度呟いたかな?
恭弥がいつ帰ってきてもいいようにご飯もお布団も2人分用意している
帰ってきたときお腹が空いてたらすぐに食べれるように
疲れて帰ってきたらすぐに寝れるように
この何の変哲もない毎日に
ある日、終止符を打つ日が来た
『今日は恭弥のお誕生日だからハンバーグを作ろっかな』
そんなことを考えながら買い物を済ます
先ほどお昼を食べ
お店に頼んでいた物を取りに行ったので
恭弥の分のお昼ご飯を片付けるのを忘れていた
家に帰るとあるはずのない黒い靴が玄関に置いてあった
私は慌ててリビングに行くと
片付け忘れていた恭弥ぶんのお昼ご飯は誰かが食べていた
『恭弥…?…恭弥!いるの!?』
「騒がしいよナル」
後ろからこえがしてそのまま抱きしめられた
顔は見えないが懐かしいあなたの声とにおい、暖かさ
あとさっきまでお風呂に入っていたのか少し熱く火照った体温が彼の存在を教えてくれる『…恭弥?』
「ごめんねナル。長いこと待たせて」
『ううん…きっと恭弥は迎えにきてくれるってわかってたから大丈夫だよ』
「ナル…」
『毎日恭弥の分のご飯も作って夜寝るときは
恭弥がすぐに寝られるようにリビングにお布団も敷いて
毎日待ってたよ』
「ごめん…ずっと不安にさせて」
恭弥はさらに強く私を抱き締める
あまりの苦しさに「苦しいよ恭弥」というと力を少し弱めてくれた
けれどまだ私は抱き締められたまま
「ずっと心配だった…この10年
帰りたくても帰れない
ナルがどれほど心配しているだろうって考えるとナルが愛しくて
すべてを投げ捨ててナルに会いたかった
けどそれもできなくてすべてが終わるのをまつことにした」
『恭弥…』
「でも今日はすべてが終わったから迎えにきたんじゃない
すべてを終わらせるためにきた
…ナル、絶対に君を危険な目にあわせたりしない
だから僕と一緒にきてほしい」
『……恭弥、今日は何の日?』
「クス……僕の誕生日、でしょ?」
最初のコメントを投稿しよう!