44人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「イクト…お前は売られたんだよ、母親に」
『売られた?お母さんに?まさかっ、お母さんがそんなことする訳ないよ、だって私っ、』
「もう諦めな…このサーカスからは逃げ出せはしない。」
『なんでよ…お母さんっ、ぅ、ヒック、グスッ…』
ついにイクトは泣き出してしまう。
「オレはナズナ、こっちは双子の妹のスズナだ」
「今日からお姉ちゃんと私でイクトさんのお世話係を任されてます、何か分からないことがあったら何でも聞いて下さいね。」
スズナはイクトの頭を撫で、あやしている。
『…ねぇ、このサーカスは何なの?何で私売られたの?』
「ここのサーカスは、いらなくなった子供達を買い取って芸を覚えさせています。」
『私もいらなくなったって、お母さんに思われたの?』
「さあな、でもここにいる大体の子供は、単に邪魔だから売られたか、両親が金に困って売られたかのどちらかだよ。」
『お母さん、私が邪魔だったのかなぁ…?』
「…さあな、オレ達にもそれは分からない。」
ナズナは辛そうに答える。
「このサーカスでは、使えない子供はすぐに消される。でも、オレ達は生き残ってみせる。」
「生き残ってこのサーカスを出て、二人で小さなお店を出すのが今の夢なんです。」
『そうなんだ…きっと叶うよ!』
「ありがとうございます。」
スズナはとても嬉しそうに笑った。
「それじゃ、イクトさん今日は疲れてるでしょ?もう休みましょう」
確かに今日はいろんなことがありすぎた。
そのせいでイクトは既に眠そうにしている。
「そうだな、じゃあお前の部屋まで案内するから、ついておいで」
そう言い双子は歩き出した。
next→
最初のコメントを投稿しよう!