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少女の使った言語は、今までハサレイが聞いたこともない言語だった。ハサレイは独学も含め、いくつかの言語は理解し、読み書きできた。しかし彼女の言葉は別格だった。ハサレイが理解できるどの言語にも当てはまらないのだ。言葉も出せずに困った表情で固まっていると、もう一度少女は口を開いた。
<私は人を探しているのです、ここはイーヴェンデリックでしょうか?>
お手上げです。ハサレイがどうしようと手をこまねいていると、少女は少し具合が悪そうな表情をしていた。具合が悪いのか聞こうとする前に、少女は力尽きたかのようにその場に倒れそうになった。あわてて駆け寄り、地面に倒れる前に支える。少女の顔は青く、体も手も冷たい。少女は薄着に近い格好だが、今は凍えるような季候ではない。対応に困り果てていると、階段を上がってきた人物に声を掛けられた。
「ハサレイ君…!?昼間からなに女の子と抱き合って…!気を失っているじゃないの…!」
現れたのは、先ほどの城で文官としてつとめているエスト=ウォーメルエルト。ダグラスの孫でしっかり者なのだが、誤解されると弁解が大変である。
「まさか…ハサレイ君がそんな子だなんて思っていなかったわ…!」
エストはわなわなと震えながらショルダーバッグに手を入れた。変な方向に間違われていると悟ったハサレイは慌ててエストの誤りを訂正しようとした。
「ご、誤解ですからエスト文官!この子が倒れそうになったから支えただけで、この子とは今日あったばかりの初対面で…本当ですってば。」
「問答無用!ハサレイ君の中のケダモノを成敗してやるわ!」
そう叫ぶと、エストは小型の辞書を取り出した。エストの武器は、この本なのである。
「くらえ!一撃粉砕、ウォーメルエルチョーップ!!」
そう叫ぶとエストは背表紙を下にして、辞書をハサレイの頭めがけて打ち下ろした。少女を抱きかかえているため、ハサレイは逃げることも出来ず、ウォーメルエルチョップを直撃せざるを得なくなった。
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