なにげない日常が

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ハサレイの家は自営の運送業。「ドラゴン急便」という名前である。 ハサレイはここの経営者の曾孫で、曾祖父にあたる経営者の手伝いをして暮らしている。経営者の名はイーファという。かつては大きな町、ティバルティエ・リオ・ストラヴェルで知らない者はいない、かなりの腕前の竜騎士だった。 そして先ほどの女性はイーファの妻、テュラ。こちらもこちらでティバルティエの次に大きな都市、エヴァンシア・パド・ルトガの自警団で腕を振るっていた剣士だったらしい。 ハサレイは顔を洗い、急いでテーブルに腰掛けて食パンにかじり付くと、フライパンで何かを焼いているテュラは振り返りもせず、 「着替えてから食べなさい。」 とだけ呆れ声で話しかけてきた。歯形のついた食パンを放り出し、急いで部屋に戻って着替え、再びせかせかと食べ始めると、今度は落ち着きがないと笑われてしまった。 食事が済むと、ハサレイとテュラで今日の荷物の配達予定を打ち合わせする。経営者である曾祖父は、いない。死んでいるわけではない、はずだ。曾祖父は現在、行方不明なのである。
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