なにげない日常が

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「今日届けなきゃいけないのは、これよ。よろしくね、ハサレイ。」 差し出された小包を受け取り、ハサレイはあて先を確認する。 「…だ、ダグラス=ウォーメルエルト…!?」 名前を見た途端、真っ青になった。ダグラスとは、騎士の名家ウォーメルエルト家の者で、もう80代後半なのもあって軍務はとっくに引退しているのだが、やたら元気で、ひとたび暴走しようものならとんでもない被害を被る。 現に、ハサレイが数日前ダグラスの暴走を食い止めようとした際、今来ている服の左袖は破けてしまった。あの暴れん坊将軍の所に行かねばならないと放心状態のハサレイに、テュラは頑張れと激励した。ハサレイは頭を抱える。 「頑張れって…ばぁちゃん、僕があの人苦手だって知ってるでしょうに…。」 「知っているわよ。でも、午前中に行けば大丈夫よ。なんてったって、ダグラス将軍を止められる最強のブレーキがいるもの。」 それを聞いていくらかほっとしたハサレイは、壁にかけてあるカバンを手に取り、服装と髪型を再度整えてテュラに行ってきますと声を掛けると、外に飛び出し、家の裏手に回った。物音に気づいたのか、首の長い生物が首を持ち上げ、振り返った。青みがかかった銀鱗を輝かせる、飛竜のマグノリアだ。 『仕事かい?』 飛竜のマグノリアは曾祖父イーファが竜騎士をしていた頃からの相棒で、飛竜の中では珍しく人語を理解し、こうして会話をすることが出来る。 「うん、配達だよ。…ダグラスさん宛に。」 ダグラスの名を聞くと、マグノリアもダグラスがどんな奴かよく知っているので思い出してしまったのか、深く溜息をついた。つられてハサレイも大きく溜息をついた。 『よりによってアイツかい…。』 「はい、アイツです…。」 じゃあさっさと済ませますかいと言いながら、マグノリアはハサレイが乗りやすいように姿勢を低くする。ハサレイがひらりと飛び乗ると、マグノリアは翼を大きく羽ばたかせて浮き上がり、ティバルティエに向かって 飛んでいった。
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