なにげない日常が

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その冷め切った声にハサレイとミークは歓喜の表情を、ダグラスは恐怖の表情を浮かべて声の方を振り返った。そこにいたのは、これから釣りに行きますという格好の、ダグラスがしまったというような声で名を呼ぶ。 「シン…!?」 だった。片手に釣竿、肩から提げる使い古したボックス。そしてその格好には多少合わない気がする右腰に提げた剣。尖った耳と白い肌、細い目はピジョンブラッドのような色の瞳。先端のみ青みがかる特異な長い銀髪を一つにまとめて帽子をかぶっている。地獄に仏が現れたと、ハサレイはシンの後光を拝んだ。 「シン少将…!」 ミークはよく来てくれましたというようにシンに駆け寄った。シンは目だけでミークの様子を見ると、ハサレイを見てからダグラスを見た。ダグラスは違う、誤解だと片手で待ったのポーズをとる。 「ミークはこの姿でそうさせたわけじゃないぞ!ハサレイにはまだ何もしとらんし!」 シンは目を閉じ、溜息をついて一呼吸置いてから、感情を抑えているような冷え切った声でダグラスに話しかけた。 「何かしようとはしていたんだろ?」 怒っていると悟ったのか、ダグラスは肩をすくませ、元の小さな老人の姿に戻った。「お、仰るとおりでございます…。」 外見的には、年齢的にシンはダグラスの下に見えるが、シンはイーヴェンデリックで長寿と言われている「竜族」の純血種で、この外見でも数百年は生きているらしい。シンはふぅと溜息をつくと、静かに口を開く。 「…ダグラス。」 「はい。」 「おイタが過ぎると、切り刻んでこませ(撒き餌)にするぞ。」 「すみませんでしたーーーー!!」 ダグラスがしょんぼりとした背中で去ってゆく。その背を見送ると、シンはハサレイを見て優しく微笑んだ。 「うちのがすまないことをした、許してくれ。この後の予定は?」 「いえ、今日の荷物はここ宛だけなんですよ。」 「そうか…、少し休んでいかないか?おいしい紅茶があるんだ。」 ハサレイがいただきますと言うと、シンはミークも誘い、ミークはとても嬉しそうに誘いを受けた。image=263008629.jpg
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