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拝啓 お父様
桜花爛漫の候…と申し上げたいのですが、今日の雨で時色の花びらたちは地面へと敷き詰められてゆきます。
踏まれ、泥と混じるその体すら魅惑的なのは、やはり桜の持ち合わせた気品なのでしょうか。
庭先では利かぬ義眼と、吠えてばかりの象が喧嘩をはじめました。
そのころころと転がる様は、いつかお父様が話してくださったおとぎ話のようです。
それからお父様に分けて頂いた鮫はちっとも鯨に変わる気配がありません。
私の餌の与え方がいけなかったのでしょうか。
お父様がお帰りの際にはご指導頂きたく存じます。
それでは、水槽の水をおこぼしになりませんようご自愛ください。
草々。
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