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リイ達は去ったが、周りは騒然としたままだ。
それらの視線の大半がトキとツキに向けられる。
其処にある感情は様々だ。
疑念、困惑、好奇、嫌悪。
2人はまるで、その全てが見えていない様に平然としている。
((どうしようか…。))
此処で違うと言ったところで、勘の良い者には気付かれる。
リイが、この場を撹乱するためだけの嘘だと言ったのだと言っても、恐らくばれる。
ぴくりとも表情を動かさず、思案する。
《どうしますか?。2人とも。》
そうしていると、頭の中に声が響いた。
『んー……。』
《一縷様と伊織様は、あなた達の好きな様にとおっしゃった。―――真実を話すか、それともこのまま真実を隠すか。どちらを選ぶかはあなた達の自由だ。》
『……そう。』
世瑠の穏やかで低い声が響く。
【篠月】であると公言すれば間違いなく周りの見る目は変わる。
2人がまた一つ頷くと、今度は謐の声が響く。
《メリットも有るでしょうが、勿論、デメリットの方が多いのです。取り入りたいが為、媚へつらう者もいれば、あなた達の名を知り態度を変える者もいる。――それ程篠月の力は強力です。あなた達が嫌う事が今より遥かに多くなる。》
その、覚悟はお有りですかと謐は言う。
恐らく謐はこの2人が傷付かないか心配なのだろう。
『…大丈夫。』
トキとツキはそう、柔らかく謐へと返した
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