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微かな微笑みを崩し、囁く様にトキとツキは言う。
『僕(私)達は、言ってしまって…良いの。……でも…、これ以上、皆の……心を…乱してしまうなら…、それは僕(私)の、…本意じゃ…ない。』
そう言って、2人は目を伏せた。
ひととの関わりを持とうとしないこの子達は、関わりを持とうとしない代わりに、誰よりも他者の事を考える。
本当に厭うなら、他者など構わず決めてしまうだろう。
――そう。
民の混乱や不安など、考慮せず、自分達の思う儘に。
――でも。
そうしないところが、この子達らしいと言うべきでしょうね。
アルはにっこりと笑い、2人を更に抱き締めた。
「トキ、ツキ。よく聞いて下さい。
――五大勢力の一角を担う者として言えば、言わず、私達が対策をとれば、これ以上の混乱を招かずに済み、いずれ民の中で無かった事になるでしょう。」
特に今はリイの事に意識が向くし、もし広まったとしても、まことしやかに語られ、やがて消える。
それに大半はリイの狂言と取る。
「しかし、私個人――あなた達の、家族として言えば、明かして欲しいと思います。」
『どうして…?』
2人が身動ぎし、此方をじっと見詰める。
澄んだ薄紫の瞳が不思議そうに揺れた。
「明かせば、あなた達が罵られる事も無くなるでしょう。私にとって、あなた達が罵られるのは耐え難い。――それに、これであなた達を私達が護る理由が出来た。」
事実、未だトキとツキを私達の側に置く事を良く思って居ない者も、死神の中にいる。
護るには最適な理由でしょう?。
そう言うと、2人の瞳が揺れた。
『…やだ。』
「!?」
この理由では不満なのでしょうか。
2人は服を掴んで呟く。
『周りの…体裁…の為の…言い方だって……解ってる。……けど。』
目を伏せながら、少し、不安そうに。
思わず、くすりと笑みが零れた。
“篠月だから”と護られるのが嫌なんですね。
「大丈夫。あなた達が例え、【篠月】でなくとも、あなた達は私の大切な子供達。――護る理由には充分。」
だから、そんなに不安そうな顔をしないで下さい。
そんな風に思い、笑い掛けると、こくり。と頷き。
『うん…。』
と嬉しそうに微笑って2人は言った。
「どうしますか?」
我ながら狡いと思いつつ、少し間を置き、再度問うた。
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