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グラウンドを包む空気は、忙しなく騒然としたままだが、唯一トキとツキの周りの空気は水を打った様に静かだった。
「詳しく教えて欲しいなぁ。」
学園長がそう言った時、アルは2人に囁く様に聞いた。
「…良いですか?。」
2人は微かに頷いて、アルの腕の中から抜け出し、彼の両隣に立った。
「――で?」
すると、学園長が待ちきれないようにやたらとアルをせっついた。
「そう急かさないで下さい。学園長。―――いえ。シェイル。」
アルは苦笑を零した後、学園長に向かってそう言えば、彼は驚いた様に一つ瞬きをし、頷いた。
まるで、耳慣れない言葉を聞いたかの様な反応にも見える。
いや、まるで。ではなく、耳慣れないのかもしれない。
その実、彼は本当の名前よりも【学園長】と呼ばれる事のほうが多い。
だからだろう。
アルはそれに対し、微苦笑して本題に入る。
「貴方が知りたい事についてですが、結論から言えば、リイの言ったことは本当です。」
その答えに、学園長達の視線が双子に向かう。
その視線を、すぅ…。と目を細めて受け止め、無機質な声で、事も無げに頷いた。
「そう、か。」
納得したように、ぼそりと学園長は言って、後ろの嘉耶やアイーシャ達は声も無く、瞠目していた。
『………。』
まぁ。予測通りの反応かな…。と2人は頭の片隅でぼんやりと思い。
2人は口を開いた。
『…それを、聞いて……、貴方達は……どう…するの。』
鋭い視線で射ぬく様に、2人は彼らに問い掛けた。
その目は何処までも硬質で冷たい。
僅かな嘘ですら暴かれてしまう様な、酷薄な冷たさだった。
途端に場の空気が冷たく張り詰め、重くなる。
だがアル達五大勢力は、特に何か口出しするでもなく、静観している。
2人の言葉はあくまで平坦で、淡々としていたが、その平坦で淡々とした様が、却って、双子に対する威圧感とも、畏怖とも解らぬ奇妙な感情を、その視線を向けられた者に抱かせる。
、
「んー………。別にどうもしないよ。ただ、知りたかっただけ。」
縫い付けられた様に、動けない生徒を、尻目に、学園長は気の抜ける笑みで朗らか笑って見せ、2人にそう言った。
『…そう。』
薄紫の瞳が逸らされると、途端に威圧感にも似た圧迫から解放され、アイーシャ達はほっ。と息を吐いた。
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