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首から下を覆う様に黒い外套を纏う少女は、悠然とした足取りで、白死神が治める【幻影(ファントム)】の土地を歩いていた。
フードを頭から被っている為に表情は読み取れないが、唯一フードの隙間から垣間見える口許は、笑みを浮かべていた。
「偵察ねぇ……。必要かなぁ…?」
くすくすと可笑しそうに笑いながら歩を進める彼女はぴたりとある場所で足を止めて、口角を上げた。
「これが篠月邸……。」
すっ。と、篠月の敷地内に入ろうと手を伸ばす。
――瞬間。
バチッ!。と蒼白い光が弾け、フードの少女の侵入を阻む。
即座に少女は手を引っ込めた。
「……わお。」
僅かに驚いた風に声を上げて、自身の手を注視する。
彼女の手は血が紅い珠になっていくつも流れ落ちている。
「えげつない威力だねぇ。」
少女は面白そうに篠月邸の門を仰ぎ見て、やはり面白いという様にケタケタと笑った。
「侵入は不可能、かな?」
一人呟くと、試しにもう一度。と指先を門に近付けると、先程より強い威力のものが放たれた。
「無理だねー。」
未だ血を流す手をぷらぷらと振り、踵を返す。
その時、彼女の背中に向けて白銀の鎌が振り下ろされた。
「!。――っと。危ないなぁー。不意討ちなんて卑怯だね。」
少女はにこりと口許だけで嗤い、言った。
『!』
あれから暫く翡翠に寄りかかり、目を閉じていたが、不意に門の方から大きな音が響き、2人は目を開けた。
「敵か……。」
翡翠が目を細め、無言で武器を出現させた。冷たい銀色の長刀。
『…待って。』
「何だ?」
『僕(私)達が…、行く。』
翡翠が今此処に居るとばれると、敵味方どちらにも不味い。
敵は脅威となる翡翠を殺そうとするだろうし、味方は最悪、翡翠を頼ろうとするかも知れない。
それを説明すると。
「その位解っている。さっさと切り捨ててしまえば問題有るまい…?」
『駄目。』
言うが速いか、トキとツキは門の方へ向かった。
「…仕様がない。」
と刀を収めた。
『…!。』
早急に門の外に向かうと、黒い外套を纏う、顔の見えない人物だった。
だが敵には違いない。と2人は決めて、白銀の鎌を振り下ろす。
「!。――っと。危ないなぁー。不意討ちなんて卑怯だね。」
とそいつは笑った。
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