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◇1◇
東京都風見区の光ヶ丘学園は、今年も温かい春の季節と共に新入生徒を迎えていた。
桜並木に心浮き立つ春と言うことで、一般修士課程選択の嵯峨 楓(さが かえで)は、リーディスト学科の生徒とは違いいたってマイペースな朝を迎えていた。
「おっす。今日も完璧B型生活の朝を迎えてるな」
中学からの腐れ縁でもある麻木 裕太(あさき ゆうた)が自転車をこぎながら後ろから声をかけてきた。
B型=マイペースと言うってのける裕太は、同じくB型である。
「マイペースなんじゃねぇよ。俺は我が道を爆走中なんだよ」
「それをマイペースと言わずなんて言うんだよ?人生の暴走族か?」
俺が人生の暴走族なら、お前はさしずめ走り屋気取って人生のターニングポイントをコーナーに突っ込んだ哀れな男だろうなと考える楓。
「お前既に人生間違えてんじゃねぇの?今なら間に合う。体内回帰しろ」
「するか!せっかく美人揃いの学園に入学したんだ。無事一流リーディストになって出世街道突き進むぜ」
楓と違ってリーディスト学科に入学した裕太は、喋らなければイケメンなのだが、どうしても女の子に目がなく自分をさらけ出してしまう為に、今のところ浮いた話しは聞かない。
「それより今年の一年レベル高いぜ」
「そんなに才能溢れる奴らでも入ってきたのか?」
裕太は力強く頷き通学路を歩く光ヶ丘学園の制服を着た女子を指差した。
その時点で裕太が何を言いたいのかわかってしまった楓は、他人の振りしながら話を聞き流す準備をする。
「将来有望なアイドル予備軍だぜ!可愛さは一種の才能なんだよ!」
「お前の持論なんか朝から聞きたくないな」
楓が興味無さそうに素っ気ない態度を示すのに対して、裕太もまた懲りずに話しを続ける所から、マイペース同士の均衡がバランスよく保たれている。
結果、腐れ縁のごとく一緒にいるわけなのだが、どちらかというと裕太が楓を気に入っていることの方が強かった。
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