プロローグ

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 階級は自分よりも低いが対等の立場のように振舞う悦子は、並み居るリーディストの中でも優れた存在で、彼女が契約しているアヴァターもまた他のアヴァターとは段違いの強さを誇っており、悦子自身の組織の中での評価は大将クラスだからである。  しかし彼女は自らを“現場派”と公言し、昇級を断っている。  組織内で彼女が発言力を持っているのは単にカインのお墨付きではなく、彼女自身が有能であるからこそなのだ。  そんな大将と大将クラスの人間を前にした兵士たちは、緊張した面持ちで会議に臨んでいた。 「まあ大体の敵組織の目星はついている。まあ目星がついているだけに厄介なんだが」  カインはそういうと、悦子は書類を置いて嘆息混じりにある単語を口にする。 “プロヴィデンスか・・・・”  世界的には知られていない犯罪組織で、自らをプロヴィデンスファンダメンタリズム(摂理原理主義)と呼称している組織である。  リーディストの中でもカインを含め群を抜いて優れたリーディストを、世間ではマスティス(マスターリーディスト)と呼ばれている。  そんなマスティスクラスのリーディスト達が、国連側には数人しかいないことに対して、プロヴィデンス側はその倍はいると確認されているのだから、そんな犯罪組織が存在すると国民が知ったら不安を煽ると国連政府が危惧するのも頷けるわけである。  カインはこのことを危機と感じて日本にリーディスト養成学校を十数年前に創設していた。  いずれこれを超える脅威が世界に現れるだろうと。  この事件はほんの些細なことに感じるほどの脅威が・・・・
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