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「…あー…」
身体が疼く。
ここに迷い込んで何日になるだろうか…。
「違う意味で死にそう」
この身体の疼きさえ虚しくなり、自嘲気味に笑ってそう呟く。
あの日は、いつものように六年の面々と山中を走り回っていた。
ひとしきり走った後でも何だか身体がうずうずしてしまい、皆と分かれて更に奥の山へと進んだ。
どれくらい走っただろう。
いつの間にか見慣れない景色に囲まれているのに気付いた。
「あっれ…ぇ…?」
暗闇の中で目を凝らすが、どうにも方角が定まらない。
加えて、疲労がどっと押し寄せて来てしまい、とりあえずその場にすとんと座り込んだ。
「…とりあえず、野宿かなー…」
実を言うと、こんな事は一度目じゃなかったりする。
この、後先考えず突っ走る悪い癖のせいで、何度か森で迷った経験があるのだ。
その度にやむなく野宿をして、次の日の朝に帰ってくるという行動を繰り返していた。
そんな事をする度に仙蔵や文次郎に叱られているのだが…
「しょーがない…よなー…」
帰れないもんはどうしようもない。
そう一言呟いて目を閉じると、すぐに意識が遠のいた。
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