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たまに、ゆっくりとした時間を二人で過ごす。
「…」
「…」
オレはこの時間が嫌いだ。
こういう平和ボケた生活を続けていれば身体が鈍るのは知っていたし、何より…
悪くないと思ってしまう自分が嫌だった。
「…おい」
「んー?」
隣に座ってうとうとし始めているカカロットに向かって声を掛けると、カカロットは幸せそうな顔でこちらを振り向く。
「いー天気だよな!」
「…あぁ…」
だらけた顔だ。
とても地球を救った戦士とは言えない…。
いつもそうだった。
仲間と笑いあって、敵だったオレにも笑い掛けて。
良くいえば素直なその気性がオレにはうっとおしくもあり、羨ましくもあった。
オレも素直になれたら、なんて思いもしたが、さすがにそれは考えただけでヘドが出る。
ふいにカカロットがオレの顔を覗き込んだ。
「なぁ、ベジータ?」
「なんだ」
「好きだぞ」
「…その口を閉じろ」
くそ。またか。
カカロットはこんなに素直に自分の気持ちをオレに伝えてくるのに、オレはちっとも思った事が言えずにいる。
「ひでぇなぁ」
「…」
また不満を言われるかと思ったが、カカロットは笑っていた。
こっちが恥ずかしくなるくらい、眩しい笑顔。
「…はは」
そうか。
オレが素直にならなくても、お前には分かってしまうのか。
「お、笑った」
「…うるさい」
「もっと笑えよー」
「オレはいい」
お前が隣で笑ってくれれば、オレはそれだけでいいんだ。
…ああ畜生。
「カカロット、お前相当平和ボケしてるな」
「…お前もな」
「ああ、オレもだ」
たまにはこんな時間を二人で過ごすのも悪くない。
End.
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