D/痛むから

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心臓を潰されたような痛みに、眉をしかめながらベッドに倒れ込む。 その痛みは、あいつの顔を思い出す度に大きくなった。 …あいつは。 きっと笑顔で、チョコを食べているだろう。 おいしいと、相手に笑い掛けながら。 「ああ、くそ…痛ぇッ…」 「大丈夫かぁ?」 「ッわ…!?」  シーツに顔を埋めそう苦々しく呟くと、すぐ隣にあいつの顔。 びくんと起き上がるオレの腕を掴み、そいつはにっこりと笑う。 「ベジータもチョコ貰ったんかぁー」  カカロットの目線は、オレの手の中でくしゃくしゃになっているチョコの包みに向いていた。 その脳天気な物言いに、オレは何故かイラつく。 「地球人の考える事はよくわからん」 「え、いいじゃねぇか楽しそうで。オラ好きだぞ」 「甘い物は好かんと言ったのに…ブルマの奴…」 「嫌いなんか?ならオラ食っていい?」 「…はあ?」  さっきこいつ「も」って言ったよな…。自分の分も食ったくせに、まだ食うか、こいつは…。 そう考えるとまた胸が痛む。 ああ苛々する。 再び襲う痛みに耐えながら、カカロットを睨みつけた。 「お前は自分の貰った分があるだろうが。…む、虫歯になるぞ…」  しまった。 つい言葉が思いつかず、子供じみた事を口走ってしまった。 しかしカカロットは気にもせずに口を開く。 「いやーそれがさぁ、悟天にみーんな食われちまってなぁ…」 「…はぁ…?」 「だからオラまだ食ってねぇんだ。だから、な?」 「いや、な、じゃなく…。第一これはブルマが…」  オレの為に、と言いかけて口をつぐむ。
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