D/痛むから

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 よくよく考えたら、このチョコのせいでさっきから心臓が痛いんだ。 ブルマには悪いが、いっそ手渡した方が楽になるだろう…。 「…やる」 「マジ!?」 「ああ。その代わりしっかり味わって食いやがれ」  心の中でブルマに謝りつつ、カカロットにチョコを手渡す。 カカロットはぱぁっと顔を明るくしてそれを受け取った。 そして次の途端、とんでもない事を口にした。 「へへっベジータからチョコ貰っちまった」 「…はぁ!?いや、それはブルマが…」 「まぁそうかもしんねーけど、手渡したのはおめぇだろ?」 「…」  呆れた。 どこまで馬鹿なんだ、こいつは。 こんなに嬉しそうな顔して。 「あ」  瞬間、カカロットの笑顔がさっきの想像とダブる。 想像の中で違う女に向けられていたその笑顔が、今はオレに向けられている。 「そういやベジータ、さっき何痛がってたんだ?」 「…え?…あ、いや…」  カカロットのその顔を見た途端、痛みは暖かさに変わっていた。 「…さぁ、忘れたな」 「?ふーん…。…あ、ホラベジータ」 「ん?」  カカロットの声に振り返ると、不意にチョコを口の中に入れられた。 その後、すぐに唇を重ねられる。 「ッん…!!」  オレの口の中で、カカロットは舌を使いチョコを溶かしていく。 甘さと痺れが広がっていくのが分かったが、不思議と嫌じゃなかった。 ねっとりとしたキスの後、カカロットは楽しそうに言った。 「甘いもんだって、たまにはいいだろ?」 「…」  今日だけはブルマに感謝しようと思った。…チョコを貰ったのも含めて。 「ああ、たまにはな」  オレは包みからチョコを取ると、自分の口に含んでまたキスをねだった。  今度はこいつの為に、何か贈ってみるか。 End.
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