落/ことのは

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「先輩は私の事好きですか?」   「え」      情事の後にそう聞いてきた可愛い恋人。     「それ…今聞く…?」   「でも、なんか気になって…」   「えぇー…」      恋人は気まぐれだ。 ふらりと現れてはまたふらりと消えていく。だから捕まえるのが難しい。 そしてふと思いがけない事を言う。だから対応に困る。     「…今まで何してたか分かる?愛の営み、ってヤツだよ?」   「でも、欲だけでもこういう事は出来ます」   「…あーうん、まぁ、男は対外そうだけどさ」      力強い目に圧倒されて、思ってもいない事を口走ってしまう。 ヤバい。こんな事言ったらホントに性欲しかないみたいじゃないか。     「いや、私は違うけどな?」      両手をぶんぶんと左右に振り慌てて訂正すると、彼は眉をひそめながらもはい、と頷いてくれた。 そのふいな仕草にドキ、と胸が高鳴る。    いつもそうだ。 彼の行動一つひとつに私はいつも魅せられる。 自分に自信があるのが良く分かる位、計算されたように顔が口が動く。     「…どうかしました?」   「ん、ああ…いや」      ぼーっと彼の顔を見つめていると、彼は少し顔を赤らめながら私に向き合った。 ヤバい、間抜け面だったと表情を慌てて戻す。 彼は一呼吸置くと言葉をせがんできた。     「早く」   「あ、はい…」      再び強まった眼光にたじろぎながら、彼が望んだ言葉を囁いた。 好きだ、と…       End.
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