オ/瞬間ボイス

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「あ…っ」  通話口の向こうから松田の声が聞こえてきた。 その声がやけに耳に響いたのは、多分…奴の声がいつもより低音だったから。 『どうかした?メグミさん…』  今まで眠っていたらしく、松田の声は少し掠れていた。 なんて事ない…ただ名前を呼ばれただけなのに、オレの胸は痛いくらいに鳴っていた。 「…ご、ごめん、寝てたか?」 『まぁ軽く…』 「…」 『何かありました?』  オレを甘やかすようないつもの声を出されてしまい、また鼓動が早くなる。 いちいち松田の声に反応して、馬鹿みたいだ…オレ…。 「…大学、忙しいんだな」 『ええ、まぁ…』 「おっオレに会えなくて寂しいだろうな!」  何を言っていいか分からなくて、つい変な事を口走ってしまった。 からかうような口調になってしまい、言ってから後悔した。 てっきり松田もムキになって返してくると思ったが、ヤツはそんな性格じゃなかった。 『ええ…寂しいですね』 「…っ…?!」  松田は素直に寂しい、と答えた。 予想外の答えにからかったこっちが恥ずかしくなって、オレは思わず携帯の電源ボタンを押してしまった。 「う、わ…」  そんな声出されたら。 そんな事言われたら。  …ますます好きになるじゃんか…バカ松田…。 End.
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