D/こどものじかん

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「トランクスくーん」      カプセルコーポレーションの前で名前を呼ぶ。  しばらくしてブルマが顔を出した。     「あら悟天君、いらっしゃい」   「こんにちわー」   「トランクス今起きたところなのよ」      しょうがない子、とくすりと笑うブルマの顔が、いつもと違う色を持っている気がした。  あまり良くは分からなかったが、いつもの笑顔ではない、と悟天は感じた。     「あ、そうそう。貴方のお父さんまた来てるわよ」   「え?」      トランクスの部屋に案内される途中、ブルマがふと口を開いた。     「お父さんが…」      悟天の父は随分前に他界している。 なのに時折下に下りてきて笑顔を振り撒いている。 そんな感じだから、死んでると言われても悟天にはいまいち実感が持てずにいた。  ただ一つの証拠は、頭に浮いている輪っかくらいか。    あまり興味を持たずに話を聞いていると、ブルマの声色が変わったような気がした。     「ベジータを巻き込んでいっつも部屋に閉じこもって修業してるのよ…。ま、孫君らしいって言えばそうなんだけど」   「おばさん…?」      静かに笑ったその顔が悟天にはとても寂しそうに見えた。  だがそれは一瞬の事で、ブルマはすぐにいつもの笑顔に戻った。     「トランクス、寝起きは機嫌悪いから注意してね。今お菓子持ってくるわ」      トランクスの部屋の前まで案内されると、ブルマは悟天の頭を撫でて元来た道を戻っていった。  少しさっきの顔色が気になったが、元気になったようなので安心した。  悟天はゆっくりと部屋のドアを開けた。     「トランクスくーん…」      トランクスの寝起きが良くないのは悟天も知っていたので、細心の注意を払って呼び掛ける。  前にイキナリ飛び込んでいったら鋭い目で睨まれた記憶がある。その後30分程口も聞いてくれなかったのだ。  もうそんな寂しいのは嫌なので、悟天は極力静かになるよう心がけた。     「おー悟天っ」      しかし、トランクスの目は予想以上に冴えていたらしい。 着替えの手を止めて大きく手を振ってくれた。 ぱぁっと悟天の顔が明るくなる。 「トランクス君っおはよ!」      たたっと駆け寄り、満面の笑みを浮かべる。トランクスも笑い返してくれた。
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