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「お帰りなさいませ。坊ちゃん」
柊也が古めかしい門をくぐると、庭掃除をしていた若者が挨拶をする。
「あぁ…ただいま」
ここはこの界隈を仕切る組長宅。
柊也は組長の実子であり、次期組長でもあった。
「坊ちゃん、お帰りなさいやし」
次々出迎えに出て来る組員…――…
柊也は半ば呆れた様子で、挨拶に応じる。
「…こんな家に連れて来たら澄麗、驚くだろうなぁ」
唯一柊也が頭を悩ましている現実であった。
「柊也?帰ったのか?」
「親父?珍しいね?家にいるなんてさ」
「あぁ…ー…抗争は手討ちに終わった…」
「ふぅん?良かったじゃん?死人が出なくてさ?」
柊也はあまり興味がないという風な返事を返した。
自分の部屋で、ひとり柊也は考える…――…
何故俺は極道の家に生まれたのか?
それは時に得でもあり、時には酷く重荷になる事もあった…―
この現実を、澄麗はまだ知らない。
柊也は悩んでいた。
だが黙っていてもいずれ知る事。
仕方ないか…―
どうせ澄麗を手放すつもりはないんだしな。
柊也が妖艶に微笑む…―…
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