汗鬼

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「ところで信濃町って広いじゃないか」 礼司は青山の骨董通りを走らせると入り口にさっきの老人の写真が飾ってある青川堂という骨董店を見つけた 「ああ、どっかで見たことがあると思ったら鑑定家の中丸さんか、なるほど」 礼司は、「ま、信じてやるか」そう言って熱海に向かって車を走らせた 熱海のパークマンションに着いたのは3時間後の8時過ぎだった 熱海の海沿いにあるリゾートマンションは豪華でも人気が無かった 「おお、ここだ。32194」ボタンを押すと玄関が開き礼司はエレベーターで8階へ上がった 暗証番号を入れドアを押すと簡単に開き部屋の電気をつけて靴を脱いだ 「お邪魔します、机はどこだ?」リビングを通って一番奥にある和室に文机があった 「あった」礼司が引き出しを引いて開けてもそこには何も無かった。 「じいさん無いじゃないか、もし無かったら会社になんて言えば良いんだ」 礼司は部屋にあるあちこち骨董品を物色をしているうちに鬼のノブに似た根付、小柄を見つけた 「これって?鬼のノブ似ているなあ」礼司は根付をしみじみと見てポケットに入れた 「ひょっとしたら、からくりの机か?」 礼司は机の三段ある引き出しの真ん中を引いて、下を引いて戻し一番上を引くと 2重底の部分があき遺書が出てきた 「これだ」礼司は急いで遺書を持って店の外に出てタクシーに乗った 「後3時間20分、間に合うな」 途中渋滞がにぶつかり11時30分に中丸邸に着いて呼び鈴を鳴らした 「どちら様ですか、只今取り込んでいますので」 「すみません、ジャパンテレビの夜野と申します。先生が危篤と聞きまして 預かっているものをお持ちしました」 「少々お待ちください」 「声の女性がドアを開けた」 「あっ、夜野です」 「はい、お久しぶりです、先生は?」 礼司は奥の寝室へ通された、そこには二人の娘とその娘婿と中年の男性が三人居た 「先生、遺書を持ってきました」 その声で酸素吸入を受けた中丸が突然目を開いて礼司の遺書を受け取った 「幸恵、恭子これが私の最後に書いた遺書だ」 そう言って二人にそれを渡し中丸は再び昏睡状態に陥った。 礼司はウロウロしていると中年男性が近づき「ありがとうございました。弁護士の沢田でございます」
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