850人が本棚に入れています
本棚に追加
/288ページ
男が
「運転手さん」
「はい」
「さっき新幹線
の出口で花田大作
が倒れていました
」
「えっ?どうした
んですか?」
「ファンが携帯で
写真を撮っていた
ら急に胸を押さえ
て」
「まだ若いのにね
え」
「芸能人は食事の
時間も寝る時間も
不規則ですからね
」
礼司は自分がテレ
ビマンだった頃を
思い出しながら言
った
「そうなんですか
?」
「ええ、みなさん
が思っている以上
にひどいですよ」
「なるほど」
男は妻の手をぎゅ
っと握った
その時、二人の生
きる強さが弱って
いるのに礼司は気
がついた
「どちらまで行か
れるんですか?」
「ええ、九州まで
」
「あの~、ご主人
」
「はい」
「死じゃだめですよ
」
「は、はい?」
「まだ、奥さんの
認知症それほどひ
どくならないです
よ」
「わ、わかるんで
すか?」
男は体を乗り出し
た
「はい」
「でも、最近徘徊
がひどくて私はこ
いつを何度殺そう
かと思ったか」
「いいえ、今住ん
でいらっしゃる場
所が悪いんです」
「えっ?」
「塀のそばに大き
な庭石があります
よね」
「は、はい」
「その下に女性の
人骨が」
「ええ?でも住ん
だのが曽祖父の代
ですから100年
以上になるはずで
すが」
「そうですね、で
も近くに最近道路
が出来ませんでし
たか?」
「はい、山側にト
ンネルを掘ってい
ます」
「それで井戸が枯
れた」
最初のコメントを投稿しよう!