生鬼

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呼び鈴を押すと30代前半の髪の長い美しい女性が出てきた 「おまたせいたしました」 礼司はドアの所に立っていた 客の松山良子を乗せると行き先を聞いた。 「わざわざすみません」 良子は丁寧に頭を下げた 「どちらまで?」 「鎌倉霊園お願いします」 「はい、ちょっと待ってください」 礼司はナビをセットして長距離の仕事がついて笑いが止まらなかった。 「あのう、往復お願いできますか?」 「も、もちろんです」 環状八号線から第三京浜で横浜へ向かうと 良子は静かに話し始めた。 「先月うちの息子、雅也が亡くなりまして」 「そうですか。お気の毒に」 「小学校二年でした」 「交通事故ですか?」 「はい、方南通りの交差点で」 「そうですか」 「ひき逃げなんです」 「はい」 「以前、地獄タクシーの夜野さんの噂を聞いていたので、  犯人がわからないかと思いまして」 「すみません、みえません」 「そうですか?」 良子は下を向いて涙を流し、時々鼻をすする音がした。 その後、良子は無言で外を見たままだった。 「悪い事言っちゃたかな?」 礼司はつぶやいた 鎌倉駅から20分ほど場所に鎌倉霊園があった、駐車場に車を止めると 礼司は花を持って良子と一緒に霊園の川沿いを歩き桶に水を汲んだ。 「すみません」 「いいえ」 良子は線香をあげ手を合わせ 礼司はその脇で手を合わせると映像が浮かんできた それは、信号が変わって横断歩道を渡っている雅也を黒い車がブレーキをかけず轢く様子が浮かんだ。 まだ体の小さい雅也はボディの内側に巻き込まれ20m引きずられ、一度バックをして環状七号線の方へ方向を変えて走って行った。 「犯人は飲酒運転ですね」 礼司は突然話し始めた。 「飲酒運転?見えますか」 「はい、見えます」 「ところで、ひき逃げの犯人の車わかりますか?」 「ええ、黒の外車で丸が4つあるやつ」 「ああ、あれですね」 「他には?」 「30代の金持ち風の男ですね」 「ゆるせない」 良子は小さな声で言って涙を止めどもなく流していた。 「かなしいなあ」
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