髪鬼

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後部座席に座っていた山野が体を乗り出して言った。 「と言うことは、息子が岡本譲さんを轢いたのかしら?」 魔美は飛田の家を見て『自分の息子に限って』 という馬鹿親が招いた事件だと考えていた。 自分もまだ高校生の魔美は自分がそこまで馬鹿じゃないと思っていた。 「魔美いい推理だ、飛田都議が息子をかばうために国松光男に代わりに出頭させた」 「なるほど。飛田都議は自分の立場も守ったわけですね」 礼司が言うと山野が納得してみんなが同意してうなずいた。 「それでこれからどうなるんですか?」 「岡本親子殺害に関連した人間は全員死んだ。だから次に近くに居る飛田夫妻を襲い始めるだろう」 屡奈は礼司に質問すると礼司は髪鬼の次のターゲットを予想した。 「それで私はどうしたらいいでしょう?」 山野は鬼退治の方法を礼司に聞きたかった。 「まず鬼を探そう」 礼司は真っ黒に空を覆っている車の窓から髪見て言った。 「あれが鬼なんじゃないですか?」 山野は家を覆っている黒い髪なんて 鬼以外の何もでも無いはずだと思った。 「いやあれは鬼の一部だよどこかに本体がいるはずだ」 「もしかしたら・・・」 魔美はタクシーのGPSのスイッチを入れた。 「見て」 「えっ?」 魔美が指差した地図を見ると三軒茶屋から離れた学芸大前で白い光が点滅をしていた。 「あれ、ここは?」 「寿々が勤めている店だ」 礼司はそう言ってアクセルを踏むと タイヤから白い煙を上げて走り出し 三軒茶屋の246の交差点を渡ると 金子が驚いて流れる景色を見て言った。 「おお、車が一台もいない」
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