854人が本棚に入れています
本棚に追加
その夜12時過ぎ、礼司は多摩川からの帰りに多摩川通りを渋谷に向かって走らせていた。
駒沢の交差点に来た時、脇に並らんだ黒い車の運転席を何気なく見ると、ぼさぼさ頭でつり上がった目の女性がハンドルを胸に押し付けるように握っていた。
「おお、怖い」
礼司が言い終わるか無いかの時
その車は急発進して凄い勢いで交差点の中に入った。
そして向かいから来た車に接触して電柱に激突した。
「ガシャン」
と凄い音とともに車のボンネットは電柱は食い込み白煙を上げていた
「ああ、やっちまったよ」
礼司はその車の運転席を見るとエアバックに首を突っ込んでいるのは
スーツ姿の男性だった。
「あれ?男?」
礼司はタクシーをしばらく走らせると
「これって鬼の仕業じゃないか!」
そうつぶやいた。
翌日、礼司はジャパンテレビの報道局の後輩水野に電話をした。
礼司は運転手をする前は
ジャパンテレビのディレクターで
上司のやらせに反抗して会社を辞めたのだった。
「しばらく、水野」
「夜野さんお久しぶりです、今はどこで?」
「ああ、タクシーの運転手やっているよ」
「ええ?もったいない、夜野さんならどこでも」
「まあいいよ、それより神奈川の飲酒運転死亡事故って変じゃないか?」
「ああ、そうですね、毎晩ありますね」
「うん、そして昨日も駒沢であって5日連続だろう」
「えっ。ちょっと待ってください
水野が地図を見みながら
「そ、そうですね鎌倉から東京へ順番に」
「な」
「でもだからと言って、我々は週刊誌じゃないから飲酒運転死亡事故の謎なんて特集は組めませんよ」
「それで、その事故のあった車の色分かるか?」
「えーと、ちょっと待ってください」
水野はそばに居たアシスタントにメモを書き調べさせた
「夜野さんどこか制作会社紹介しますから戻ってきてくださいよ」
「そうだな、そのうち飲もうぜ」
「はい、おごりますよ」
「サンキュー」
「分かりました。全部黒です。車種が・・・・」
水野が声を詰まらせた
「どうした?」
「みんな同じ・・・です」
最初のコメントを投稿しよう!