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女性は笑みを浮かべ甘えるように男の右腕に左手を通し
「先生、お車は?」
「そこの通りに待たせてある。送って行くか」
男はニヤリと笑うと
「いいえ、先生と方向が違いますからタクシーで帰ります」
「そうかそうか、残念だな」
「じゃあ、また遊びに来て下さいね」
「おお」
女は男と別れると
タクシー乗り場に向かった
最近の不況でタクシー乗り場には人が並んでおらず
タクシーに乗ると気取った口調で「月島お願い」
「はい」
運転手が返事をすると女はタバコを咥えた
それを見ていた運転手は
「すみません、禁煙なんですけ
ど」
「窓開けりゃいいでしょ」
「困ります」
プライドを傷つけられた女は
不機嫌に口をならしてバックにタバコを戻した
五分ほどで月島の高層マンションが立ち並ぶ道路に止まると女はコートの襟を立てた
その瞬間、女の体に激痛が走った
「痛い!」
首からぴゅっと血が飛ぶと
顔の血の気が引き真っ白になり
女が脱ごうとしているコートが脱げず力尽きマンションのフロントへ向かう途中で倒れた。
すると、コートの下からくちゃくちゃと物を食べる音がし続けた
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