写鬼

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写鬼

ある山の中にある御堂その中に護摩を焚いている僧侶 が 読経を唱え白い皿の真っ赤な液体を筆につけ白い紙に信玄と書いて火の中にくべる と火が倍の大きさに燃え上がりその火は龍の形になってまぶしく光った 夕方の東京駅、男が大阪からの新幹線が18番線ホームに着きドアが開くと 「きゃー」 「大ちゃん」 若い女性の声が聞こえた男は腰が低く頭をぺこぺこと 下げながら階段に向かって歩いていた 「だれ、だれ?」 「花田大作よ」 女子高校生らしい少女が隣に居た友人に聞いた 「恵子、誰だか知らないの?」 「うん、何やっている人の?」 「芸人」 「あっ、私お笑い見ないから」 花田大介は階段をおり新幹線改札を出ると突然胸を押 さえて倒れ痙攣を起こした 「きゃー」 さっきまで囲っていた周りの女性が悲鳴と共に離れた 騒然とする改札口には駅員や救急隊員や鉄道警察隊が 集まってきた その騒ぎをよそに東京駅八重洲口で客待ちをしていた 礼司に番が来て妻を気遣う 老夫婦の荷物をトランク に入れた 「どちらまで?」 「羽田までお願いいたします」 男は東北訛りで言った 「はい」 礼司が返事をしてタクシーを走り出すと
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