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「えっ!いるのー!?」
「いちゃ悪い?」
「悪くはないけど…」
「…無いけど?」
「意外だったから…つい」
…つい、ねぇ。可愛い顔して随分キツイ事おっしゃること。
「…誰?私の知っている人?」
「知っていると言うか…」
「知っている人なのね!?」
マズイ、私が押されている。
「誰」
「…」
「私はいつもこうやって知夏ちゃんに助けられるのに、その知夏ちゃんの辛い時に私が何も知らなかったなんて…!」
いや、知られ無いようにこっちこそ敢えて隠してたんだから当然なんだけれど。
「誰なの?事と場合に拠っては私協力出来るから!」
「し、しないで良いから」
「何で?」
「…相手が迷惑するから」
「そんなの分からないじゃない」
「それでも…!」
「そんなの知夏ちゃんらしくない!」
「じゃあ私が告っても絶対に迷惑にならないと言うの!?」
いい加減躱すのが面倒になってしまって勢いづき、加奈子の肩を掴み
「貴女よ、加奈子」
「…え…」
ほら、見た事か。呆然とした顔を見届けると、
「それでは私は帰るから」
くるりと踵を翻し、帰路に就こうとした所で強い力で腕を掴まれた。
「待って、何処に行くの」
「何処って…家に帰ろうと…」
「私の返事も聞かないで帰るの?」
「だって…どうせ無理なんでしょう?」
顔を反らし呟いた。
「馬鹿ね」
クスリと笑ってる。
「私の初恋誰か知っている?」
「…?」
「知夏ちゃんよ」
「…嘘よ」
「本当よ」
加奈子が心持ち背伸びして背けていた顔を戻す。
「だけど、知夏ちゃんと別れたりフラれたらと思って、ずっと知夏ちゃんに似た様な人とばかり付き合ってた」
スッと顔の輪郭を辿って目元でとまる。
「…そう、この瞳…色素の薄い透き通ってるこの瞳に虜になったのよ…付き合う相手はここが似てる人を探してた…けど結局居なかったけどね」
「じゃあ私達お互いに同じ事してたって事?」
「そうなるわね」
「…プッ」
私達は道端で腹を抱えて笑い転げた。ひとしきり笑ったらどちらからとも無く手を握り合って歩き出した。
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