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「この子…異人?」
「あぁー…歩さん。その事は…」
「ヤだな近藤はん!誰にも言わへんよ。興味もないし、この子可愛ええし、近藤はんが一人占めしたい理由もようわかるわ。」
「歩さん!!?」
歩はへらへらと笑ってさくらの横に座った。
俯くさくらの手を握る。
「………――!!?」
「大丈夫。近藤はんは馬鹿がつく程のお人好しさかい、あんたを傷つける事はせぇへん。」
「………―」
暖かい手…
ゆっくり顔を上げた。
「名前は?」
「内海…さくらです…」
「さくら?えぇ名前やない。名前に負けない綺麗な顔立ちやし、もっと堂々としいや!うちは山崎歩、よろしく!!」
悪びれた様子もなく笑うと、私の右腕の着物の裾をたくしあげた。
そこには青アザがくっきりとあった。
「…――うわぁ…むっちゃ腫れてるし内出血起こしとる。良く何も言わず我慢したなぁ?偉いやん。」
「どう?治りそう?」
歩さんの後ろで眉毛をへの字にして情けない声を出している近藤さん。
そんな彼に一つため息をついた。
「痣やもん、治るに決まってるやろ。」
全く、と悪態をつきながら歩という女の人は薬箱の中から薬や当て布を出す。
「…あ、あの……」
右腕の痣を差し置いて二日前に浪士に斬られた刀傷を手当てし始めた。
緑色の薬草を搾ったものと思われる液体を垂らす。
「…――い゙っ…!」
「染みるやろ?これが効くんよ」
そう言って次は小さな木箱を出して、蓋を開けると囲炉裏から種火を運んで入れた。
ふわっと風を扇ぐと、部屋に囲炉裏とは違う暖かさが広がった。
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