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しばらく此処で暮らす事になったけれど…
早く出て行った方がいいに決まっている。
………でも…
身体中が軋んで思うように動かない。
「……早く…早く治って…」
布団越しに足を立て、膝を抱えて呟く。
──維新志士が私を見つける前まで…
こんな暖かい人達を危険に巻き込みたくない…
そうして、私はいつの間にか深い眠りについていた。
──────…
「さくらちゃん?起きとる?」
「………ん……?」
目を開けると同時に入って来たのは眩しい淡い光と、私の顔を覗き込んでいる歩さん。
「あ、おはよう。」
「………おはよう…ございます…
…すみません……寝すぎてしまいました。」
「あぁ、ええんよ。まだ体が休息を求めてるんやから、寝とき。」
「……でも…」
「休養ってそういうことや。
朝ごはん、食べれる?」
布団で横になっている私の横に座ってお膳を差し出した。
美味しそうな麦飯とお味噌汁。
焼き魚にお新香。
とても豪華とはいえないが、私にはものすごく贅沢に感じた。
「……嬉しいんですが…食欲がないので…遠慮しときます……」
「あー…やっぱりお粥とか消化のええ方が良かった?
うち気が利かんなぁ…」
お膳を持ったまま見るからにしょんぼりする歩さん。
その姿が幼くみえて、慌てて言葉を返す。
「あ……そうじゃなくて。
……私、今まで食事も満足にとっていなかったから…
体が受け付けなくなっているだけです…」
「なら余計にお粥の方がええやない!待ってて、すぐ作って来るさかい。」
「えっ…いえ、あのっ…」
部屋から出て行く歩さんの背中を見て言葉を濁らした。
朝食自体、遠慮したい。
なんて意見を言えるような身分じゃないか…
「……こんな知らない土地で…誰だかわからない人達と同じ家に暮らして……
……――早く帰りたい…」
どこに?
帰る場所なんてないのに。
早く…一人にして……
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