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───────……
鉛色の空。
昼間なのに太陽を見る事なく、冷たい風が流れている。
呼吸をするたびに出る白い息。
手足はじんじんと固まっているのが感覚的にわかった。
京の中心街からだいぶ離れた小高い丘に私は立っている。
藍色で無地の着物に、頭を覆うように纏っているのは肩掛け。
この肩掛けは昼間には欠かせない大切なもの。
私はいつもこの丘からにぎやかな街を見ている。
それがいつまでも続くと思っていた。
「お姉ちゃん何しているの?」
「………――!!?」
あどけない声が聞こえたと思って後ろを振り返ると、女の子が立っていた。
桃色の可愛らしい着物に着物と同じ色の巾着を持っている。
「そこから何か見えるの?」
好奇心に輝く瞳。
笑うとえくぼが出来る笑顔。
女の子は私の横に来て街を眺めている。
「たまね、いつもあそこにある甘味処からお姉ちゃんの事見てたんだよ。」
「………――え」
「いつも頭に布かぶってるよね」
そう言って私の顔を覗こうとする
それを私はとっさに避けようと一歩下がった。
女の子は一瞬、悲しそうな顔をするとすぐに笑顔に戻る。
「………――」
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