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寒い北風がヒュウッと吹いた。
女の子は身震いすると巾着から何かを出した。
「はい、お姉ちゃんにあげる!寒い時は飴を食べると元気になるって父上が言っていたの!」
小さな手を差し出して、手のひらを見ればそこには橙色の透き通った丸い飴。
私は彼女を恐る恐る見ると、ニカッと笑い手のひらをぐいっと私に向ける。
「あげる!」
「………ありがとう…」
ぽつりと言って飴をつまんで口の中に入れた。
彼女も飴を口に入れて幸せそうに口を動かす。
ほどよい甘さが口の中に広がった
「お姉ちゃんの名前は何ていうの?」
「………さくら。」
「桜?いい名前だね!たまは父上が決めたんだよ!!」
楽しそうに話すこの子の話に相づちも口を挟まず黙って聞く。
……この子はどこの子なんだろ…
街から此処に来るには道が複雑なのに…
そんな事を考えていると女の子がまた大きく身震いをした。
「………くしゅんっ」
「……―寒い…?」
「うん!でも大丈夫だよ!」
鼻を赤くさせながら笑うこの子に私は自然と肩掛けを取って、彼女の小さな肩にかけた。
「いいの?」
「……―うん…私は、寒いの慣れてるから。」
「ありがとう!」
時は師走。
季節は真冬。
雪がちらほらとつもる京の山に私達は居る。
「………お姉ちゃんは、異人さんなの?」
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