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あいつもあたしのことを気付いたらしい
「見たことない子だね。ここら辺の子?」
と声をかけてきた。
「なんでここ知ってるの?
ここ、この町が一番キレイに見えるところでさぁ…一部の人しか知らないはずなんだけど」
あいつは声が低くなっていて
背も比べものにならないぐらい高くなっていた。
昔はガキだったのに男を感じさせるように成長したあいつに
あたしはいつのまにか得意になってしまった、嫌得意になるしかなかった自慢の作り笑顔で
「幼稚園の時この町に住んでいたんです。また引っ越してこの町に来たんですけど、この場所は父親がこの町で一番景色が綺麗な場所って言ってよく連れて来てくれてました。この町の記憶は曖昧なんですけど、ここは覚えて来てみたんです」
と、どこから出てきたのか
わからない嘘をついて答えた。
この場所は神田裕樹とあたしともう一人の秘密基地みたいな場所だった。まだ仲がよかった時の
仲が悪くなってからもあたしは一人通ってた。
この景色だけがあたしの救いだったから。
「へぇー俺らだけじゃなかったんだ。」
あいつはそういいながら
この場所から去って行った。
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