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足のおももくままに歩き続けていたが、ふいにダストの足が止まった。
「へぇ~こんないいところがあったんだな」
そこはアルレビス学園全体を見渡せることができる屋上。真っ青な空がダストを歓迎しているようにも思えた。
「そうだ。お前も出てこいよ」
そう呟くと、辺りに微かな光が集まり、その光の中心から小さな妖精が姿を現した。
「なに、どうしたの?」
「いやな、風が気持ちよいから一緒に当たらないかなって」
「そんなことで呼んだの?信じらんない~。…まぁ、ほんと良い風ね」
めんどくさそうな仕草を見せたのも一瞬。
それもそのはず。
小さな妖精の彼女はダストが契約した風のマナ。
人間より遥かに空気に敏感だ。
「だろう?そうだ、いい場所に連れてきたんだし、いつもの『あれ』やらない?新入初日だから忙しいだろうし、今のうちに」
「う…『あれ』は疲れるのよ?」
『あれ』とは自身が持つ武器、ナイフに風のマナの力を付加すること。
これをすることでリーチは長くなるし、切れ味も上がる。
もっともまだ未熟なダストでは付加した力を解放すると、半日しかその力を維持出来ない。
「なぁ頼むって!素材の探索の時にやるより、前もってやってるほうがいいだろ?」
拝むよいにすがりつく。世界広しと言え、自分のマナに頭を下げるのはダスト以外いないだろう。
「………しょうがないな~あまり使いすぎないでよ?」
「よっしゃ!ありがとう!」
「……ぅ~///それ卑怯…///」
偽りのない純粋なダストの微笑み、それに照れたのかポツリと呟き、風のマナは逃げるようにダストのナイフに宿った。
「よし、やるか…!」
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