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『…ただいま』
暗い部屋に入る。
あの時から何も変わっていない部屋。
開けた窓は、いつも扉からなんて入ってこない彼のため。
『寒…』
一人しかいない広い部屋が、余計に虚しかった‥
『もう一年だよ‥
なんで帰ってこないの‥』
胸元に手を当てる。
急所を外してつけられた傷は
彼の優しさを物語っていて‥
涙が、出た
「‥なんで、泣いてるんじゃ‥?」
『…戻ってこないから‥』
「誰か待っとるのか?」
『もう一年も待った‥』
ゆっくりうつ向いていた顔を上げる
見つめる先は彼が出入りする窓
風になびくカーテンに見え隠れてする
人の姿
見間違えるワケない
『…カク‥?』
カーテンがまくれ目に写った姿は
紛れもない
彼
「泣かせてしもうたのう」
帽子を少し上げて少し困ったような顔を見せた。
あぁ‥
最上級の笑顔と共にこの言葉をあなたに贈ろう。
『おかえりなさい』
Fin
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