1.入学式

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いや、他人事のように言うけど、お前の家も大きいだろ? 父方、母方どっちも名家だよな。 ってか、李緒の手紙の内容はなんだったんだろうか。 親から来たっていう割にはいつも通りだし。 「なぁ、お前の手紙はなんだったんだよ?」 「うーん、内緒」 結局、李緒から何もないままに夕飯にピラフが出された。 なんだか流された感が満載だけど、俺は出されたピラフを口に運ぶ。 ……相変わらず、腕の落ちやがらない嫌味な男だ。 体調悪くても味変わんないんだよな。 更に菓子まで美味い。 もう少し弱みがあった方が可愛げあると思うけど。 いや、男にあってもキモいだけか。 「なぁに百面相してんの?」 李緒は楽しそうにこちらを見て笑った。 そしてふ、と気づく。 俺用にとピラフが出されているのに、あいつ、自分の分は用意してなかった。 「蒼太は、今回揉めそうだね?」 そうして、余裕たっぷりのかおで笑うのだ。 いつだかも、俺1人分だけ作って自分は食べないなんてことがあった。 和希がいれば、無理矢理にでも食わせるんだろうけど。 生憎、こいつは俺が言った所で言うことを聞きやしないが。 「愉しそうだな、お前」 「他人事だからな」 夕食を終え、早朝発つ俺は、李緒に一声かけて、先にベッドへ入った。 そして翌日、朝一の便で両親の元へと飛んだのだ。 一番会いたくなかった2人の元に。 「絶対、認めない」 俺の未来も、やりたいこと、全部諦めない。 だから、何一つ認めたくない。 .
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