2.帰省

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「っていうか、何で中山じゃねぇんだよ」 「中さんは、茅乃様からのお呼び出しですわ!」 ですから、私です~と楽しげに歩く明日美を、本気で殴りたくなった。 いや、だってね。 何度も言うが、こいつはかーなーり、ウザい。 マジでタチが悪いのだ。 そもそも家にはこいつ以外にもメイドやら執事やらがいたはずだ。 それこそ、見慣れた顔から新人までより取り見取りな感じでだ。 キャラジャンルも豊富である。 それなのにわざわざこいつを選ぶとは、どういうことだ。 「明日美。 何か、前より人増えてないか」 俺がそういえば、明日美は、 「当たり前ですよ! 蒼クンという名の後継者のお帰りですもの!」 とかほざいていた。 加えて、新人からベテランまで総出でお出迎えですの!と笑う。 うわー、腹立つ。 人をイラつかせる天才だよな。 付き合い長いけどさ。 「だから、俺は継がねえって言ってんだろ」 ため息交じりに呟いたら、明日美は困ったような笑顔を返してきた。 何だよ。 ずっと、ずっと言ってきたことだろ。 「織人様、入りますよ」 明日美がノックして先に部屋へ。 それに続いた俺は、入って早々父を一発殴った。 横っ面に一発くらって、吹っ飛んだ父は赤みのさす頬を擦りながらほわりと笑う。 「ってて。 蒼クンはやんちゃだなぁ」 効果は今ひとつのようだ。 よし、もう一発やるべきか。 その笑顔がムカつく。 「ほぉら、蒼クンそこまで。 久しぶりだからすごい元気ね」 俺の手を止めたのはこれまたニコニコと笑う母だった。 この人も年齢にそぐわないふんわり系。 明日美を越える天然系だし。 「良い子だからその拳、おろそうね?」 母も父もどうしてこう、人をイラつかせるのか。 いつまで経っても、俺も等身大で見てくれない。 イラつく俺の腕にしがみついて止めたのは、他ならない明日美だった。 「蒼クン、そこまでです」 結局俺はそのまま明日美に引きずられ、ソファに座らせられた。 「さて、本題に入ろうか」 父は俺に殴られた頬を氷で冷やしながら、質の良いソファに体を沈めた。 もったいぶってないでさっさと話してくれないかな。 1週間ぐらい休みとってきたけど、滞在は短めで行きたいんだよな。 向こうで練習とかもしておきたいし。 「さて、蒼太。 明日のパーティーだが、お前のお披露目と婚約者発表を兼ねている」
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