14人が本棚に入れています
本棚に追加
「っていうか、何で中山じゃねぇんだよ」
「中さんは、茅乃様からのお呼び出しですわ!」
ですから、私です~と楽しげに歩く明日美を、本気で殴りたくなった。
いや、だってね。
何度も言うが、こいつはかーなーり、ウザい。
マジでタチが悪いのだ。
そもそも家にはこいつ以外にもメイドやら執事やらがいたはずだ。
それこそ、見慣れた顔から新人までより取り見取りな感じでだ。
キャラジャンルも豊富である。
それなのにわざわざこいつを選ぶとは、どういうことだ。
「明日美。 何か、前より人増えてないか」
俺がそういえば、明日美は、
「当たり前ですよ! 蒼クンという名の後継者のお帰りですもの!」
とかほざいていた。
加えて、新人からベテランまで総出でお出迎えですの!と笑う。
うわー、腹立つ。
人をイラつかせる天才だよな。
付き合い長いけどさ。
「だから、俺は継がねえって言ってんだろ」
ため息交じりに呟いたら、明日美は困ったような笑顔を返してきた。
何だよ。
ずっと、ずっと言ってきたことだろ。
「織人様、入りますよ」
明日美がノックして先に部屋へ。
それに続いた俺は、入って早々父を一発殴った。
横っ面に一発くらって、吹っ飛んだ父は赤みのさす頬を擦りながらほわりと笑う。
「ってて。 蒼クンはやんちゃだなぁ」
効果は今ひとつのようだ。
よし、もう一発やるべきか。
その笑顔がムカつく。
「ほぉら、蒼クンそこまで。 久しぶりだからすごい元気ね」
俺の手を止めたのはこれまたニコニコと笑う母だった。
この人も年齢にそぐわないふんわり系。
明日美を越える天然系だし。
「良い子だからその拳、おろそうね?」
母も父もどうしてこう、人をイラつかせるのか。
いつまで経っても、俺も等身大で見てくれない。
イラつく俺の腕にしがみついて止めたのは、他ならない明日美だった。
「蒼クン、そこまでです」
結局俺はそのまま明日美に引きずられ、ソファに座らせられた。
「さて、本題に入ろうか」
父は俺に殴られた頬を氷で冷やしながら、質の良いソファに体を沈めた。
もったいぶってないでさっさと話してくれないかな。
1週間ぐらい休みとってきたけど、滞在は短めで行きたいんだよな。
向こうで練習とかもしておきたいし。
「さて、蒼太。 明日のパーティーだが、お前のお披露目と婚約者発表を兼ねている」
最初のコメントを投稿しよう!