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あ、ほっぺに湿布貼ってる。
『蒼クン、どこに行ってたんだよ~! パパ心配だったんだよ?』
『誰がパパだ、離れろクソ親父! 単なる観光だよ、ジェラート食いたかったんだよ!』
……邪魔されたけどな。
バニラ以外も食べときたかったんだけど。
『あら、言ってくれれば取り寄せたのに』
だから言わなかったんだよ!
街を見ながら食べたかったんだよ!
『織人様、茅乃様、本題に入りましょう』
シルヴァが軌道修正してくれたお蔭で本多に入れたけど、女の視線が痛いです。
もはや刺さっています。
俺に穴が開いてしまいます。
『なんだよ』
『……っ!な、何でもありませんわっ!』
……うぜぇ。
早く日本に帰りてぇよ、畜生。
李緒ー、和希ー、助けてー。
『蒼クン、彼女が手紙で話したダニエラ・アタッコーディオさんだ』
『シルヴァから聞いてるよ』
ため息交じりに返答する。
ってか今日呼ぶなら明日のパーティ。
必要はあるのだろうか。
『ホラ、蒼クン。 ダニエラちゃんに挨拶をしなさいな』
母に促され、長く重い溜息を吐く。
仕方なく、彼女と視線を合わせ、自己紹介。
『早見、蒼太だ』
『ダニエラ、ですわ』
名前だけ告げたら、短くファーストネームだけ返ってきた。
あぁ、本当にめんどくさい。
翌日、予定通りにパーティは催され、俺とダニエラのお披露目がなされてしまった。
未成年である俺と彼女は早くに退出を許されていたので、気配を薄めて会場から部屋に戻る。
日本から来た時の服をキャリーに詰めて、帰国のために一度玄関ホールへ。
そのさきで ダニエラとシルヴァに鉢合わせた。
昨日と同じようにスルーしようか。
それがいい、と1人で同意までする。
決意した俺はスタスタと歩調を緩めることなく進んだ。
が、途中でシルヴァに腕を掴まれた。
『何』
『空港までお送りしますよ』
いや、別にいらないんだけど。
っていうか、困るんだけど。
『いや、いい。 俺、アンタらに恩を売りたくはないし』
それでも、と引き下がるシルヴァ。
意外としつこいな。
『お嬢様に、不利益なことはしたくはないので』
『俺が1人で出ていくのが損だって?』
『披露初日に不仲説など、笑えませんからね』
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