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薄く笑いながら李緒は俺に言う。
はっきり言おう。
「もう、帰って良い?」
それぐらい気持ち悪いんだけど。
俺と李緒がそんな話をしながら歩いている後ろで、和希は誰かに電話をしていた。
相手は知らないが、少しイラついているように見える。
……珍しいな。
「そういや、李緒。 お前ここ長いよな。 知ってる先輩とかいねえの?」
「んー……、どうだったかなぁ」
そういって考えるそぶりをしたっきり、明確な答えは返ってこなかった。
「李緒、スタートはいつものか?」
いつの間にか、電話を終えたらしい和希の問いに李緒は大きく頷いて見せた。
場所は海賊船。
「土産屋が目当てなんだよね~」
と補足。
アクセマニアだし、大方あの髑髏シリーズを集めているんだろうな、なんて思いきや。
「あの銃」
「子どもか!」
思わずツッコミをいれてしまった。
銃て、アクセじゃなくて銃て!
いまどき子供でも買わないだろ!
「……で、お前今日いくら持ってきたんだ」
「アクセ全種コンプ分は余裕であるね。 まぁ、何種類か持ってるから全部は買わないけど」
和希の疑問にさらりと答える李緒。
明言しちゃいないけど、なんつー金額だよ。
「あ、カードの方がね」
あぁ、忘れてたけどコイツ、名家の生まれだったな。
そうなりゃカードの1枚や2枚……。
「順番来るぞ」
和希に促され、俺達はボートに乗り込んだ。
お馴染みの髑髏の台詞の後、少しの傾斜を越える。
陽気な海賊団が歌ったり、戦ったり、略奪したりと場面がくるくる変わっていく。
それに合わせて、李緒も楽しそうに歌を口ずさむ。
「……ッチ」
和希が背後を振り返り、舌打ちした。
何があるのかと振り向けば、俺がさっき見かけた銀髪さんがいた。
薄暗いアトラクションの中でも、その銀色はよく目立っていた。
「―……」
その時、隣で和希が言ったことは聞こえなかった。
でも、久し振りに困った顔をしていて、その銀髪さんと何かがあるんだろうなというのはなんとなくだけど、思った。
李緒は李緒で呑気に楽しんでるけど。
陽気な海賊の声に重なる聞きなれたバス。
そして、そんな俺の知らない2人の知りあいと思われる銀髪さん。
(多分きっとだけど、李緒が壊れたっていう前に縁があった人だ)
海賊たちを眺める旅を終えて、お土産売り場へ。
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