3.交流会

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あいつは嬉々として銃をいじっている。 その姿は図体ばかり育った子供の様で。 「あいついくつだよ」 なんて苦笑いをしてしまうのも仕方がない流れだった。 「……まぁ、大目に見てやれ」 和希は慰めるがごとく、俺の肩をポンと叩いた。 そのタイミングだった。 「……っ和希!」 さっきから何かと見かけていた銀髪さんだ。 「さっきからちらちらと……。やっぱりあなたでしたか」 突然声を掛けられて驚く俺に対し、和希は銀髪さんの顔を見て、ため息交じりに言葉を返した。 そんな和希に彼は笑う。 「敬語はいいよ。 和に使われるのは気持ち悪い」 「アンタ失礼だな」 今の今まで悪態をついていたとは思えないほどに自然な会話のテンポ。 あぁ、やっぱり俺の思った通り知り合いだったんだ。 「ところで、君がベースの?」 銀髪さんにいきなり声を駆けられ、驚きつつも頷きながら名乗る。 銀髪さんは蒼太くんかぁ、と穏やかに笑う。 和んでいたタイミングで李緒が土産袋片手に戻ってきた。 さっき持ち比べていた銃のうちのどれかを買ったんだろう。 窺える表情が少し嬉しそうだ。 「アクセは良いのか?」 俺の問いにここのは全部そろってるから、と返す李緒。 そうか、持ってるのか。 というか、あのアクセの山で持ってる奴とか把握してんのかよ。 「そういえば、和希と仲が良さそうですけど、先輩俺とも会ったことありますっけ?」 李緒が銀髪さんをみて首を傾げた。 聞かれた先輩は苦い表情を浮かべ、和希もどこか焦っている様子だ。 というか、だ。 和希の知りあいとなれば、生まれてから幼馴染として生きてきた李緒の知りあいと言っても過言ではないくらいなのに、彼は知らないと言う。 そして、それに対する和希と先輩の不自然な反応。 “李緒は記憶が抜けてる時期がある” いつだったか和希が言った。 俺が編入してくる少し前、李緒が事故にあったらしいこと。 そしてその時の後遺症がいくつかあること。 それだけは聞いている。 詳しい話は教えてもらえてないけれど。 「俺は天神海斗、よろしくね」 俺が思考に耽っている間に自己紹介をする流れになっていたらしい。 海斗と銀髪さんが柔らかい声で名乗った。 「海斗先輩?」 海斗さんは李緒が先輩づけで呼んだことに一瞬だけ顔を顰めたけれど、すぐに崩してよろしく、と笑った。
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