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在籍する学園の入学式があった。
中等部から内部で過ごしている俺には、あまりテンションの上がらないイベントだ。
何しろ内部生からしたらエスカレーター制であるが故に、形式上の入学式に過ぎない。
そんなイベントにいやいやながらも参加すべく、俺と他2人は仲良く講堂へ向かった。
「やっぱりさあ、帰りたいんだけど。 今更じゃんか、誓いの言葉とかいうの」
先頭を歩くノッポの金髪、李緒は口調も怠そうに首元まで上げていたタイを緩めた。
襟元から覗く鎖骨にはうっすらと伸びるトライバルの断片と赤い痣がチラつき、昨日も昨日とて李緒が通常運転だったことを嫌でも悟る。
「ドアホ。 先生が寮まで来てお前を指名したんだ。 それだけでもいいからちゃんとやれ」
そんな怠そうな李緒の半歩後ろにいた黒髪眼鏡の和希は、李緒の後頭部をスパーンと叩きあげ、喝を入れた。
ちなみに李緒相手にこんなことをするのは、幼等部からの付き合いで幼馴染の和希くらいである。
和希は李緒とは打って変わって真面目が服を着て歩いているような男だ。
だからこうも正反対な2人がずっと一緒にいるっていうのもなんだか不思議な感じがする。
俺?
俺は2人とは中等部の途中から仲良くしているので、どつき合いには参加しない。
……というかしたくないともいうな。
俺はただそれを見て笑うだけだ。
それが、変わらない俺達の日常。
大切でくだらない俺の日常なんだ。
そんなくだらない中身のないやり取りをしているうちに講堂に着いたようだ。
ウチの講堂は、敷地内にある幼等部から大学部までの生徒が使用するので、めちゃくちゃ広い。
というか、広すぎる。
お蔭でステージから最後尾の扉までは結構な距離がある。
登壇後、教師の顔は正直判別できない。
で、驚くべきはそこだけじゃない。
そこまで広くてそこそこの収容人数を誇るのに、入学式には在校生は参加しない。
ウチ、広さもだけど、生徒数もかなりいる“マンモス校”って奴なんだよね。
「なるべくステージによっておいた方がいいんだろ」
「まあ、式の途中でステージの方に移動する予定だからね」
俺の提案に李緒も和希も賛同して、最前列に陣取った。
結構人数埋まってるかと思ったけど、最前列ってあんまり人気ねえんだよな。
普通はクラス別に指定席があるだろって?
俺らの学校、人数が人数だから新入生呼名ないんだよね。
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