1.入学式

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人聞き悪い言い方をするなよな。 聞いてはいる、留め置かないだけ。 思い出なんて邪魔なだけだ。 俺には、俺達には必要ないだろ。 「不器用な生き方だねぇ」 「バーカ。 お前も同類だろ」 ぼんやり笑って呟いた李緒に、和希も笑って答える。 俺達は、親への反抗だと少しの力で逆らって、それでもどうにか足掻いて生きてる。 李緒が新入生代表を務めた入学式は、そのあと何の問題もなく終わり、クラス発表も終わった。 講堂脇の掲示板での一斉貼り出し。 俺達3人は“また”Aクラスだった。 持ち上がりだし、分かってたことだったけど。 3人で並んで、高等部校舎の1-Aを目指して歩けば、女子は群がってくる。 毎度お馴染みって奴だ。 「毎度毎回飽きねーのかな、うるせーし」 本当嫌になるね。 騒ぐ女は嫌いだ。 まぁ、女自体そんなに好きな方じゃないんだけど。 「まぁまぁ。 カリカリするなよ」 李緒は外面がいいからそんなの微塵も出さないけど。 あと、和希も滅多に表情や口には出したりしない。 あいつはポーカーフェイスが売りだからな。 それがかっこいいっつって、人気を博しているそうで。 女の好みはよくわからねえ。 あれ、一歩間違えたら冷たいって言われて終わりだろ。 「カリカリじゃねえよ。 イライラだ」 「尚更タチ悪いって、蒼太」 お前と違って腹ん中が分かんねえよりマシだろ。 俺は自分に正直に行動してるだけだし。 自分に素直に正直に。 そんな俺の、教室までくらい静かに行きたいっていう細やかな願いは、無残にも崩れた訳で。 ずーっと黄色い声の花道だぜ? 耳がキンキンするわ。 「おーっす、遅かったな」 「永岡くん達は仕方ないでしょ」 教室に入れば、中等部からの顔見知りから声がかかる。 よく馴染んだトーンにようやく人心地がついた。 「今年もみんなとでよかったよ。 また色々とよろしくねー」 李緒はそういって、殆ど空の鞄を机の脇にかけた。 教室の席は埋まり始めていた。 担任が来るまでの少しのフリータイム、特に何もせずに席に着いて待つ。 李緒は携帯、和希は文庫本を取り出した。 ちなみに俺達の席はそこそこ離れている。 俺の席は窓際の前から3番目、日当たりのいい席で、昼寝にも最適だ。 1年は4階だから見晴らしもいいし。 初期の席とは言え、ベストポジションゲットだな。
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