14人が本棚に入れています
本棚に追加
人聞き悪い言い方をするなよな。
聞いてはいる、留め置かないだけ。
思い出なんて邪魔なだけだ。
俺には、俺達には必要ないだろ。
「不器用な生き方だねぇ」
「バーカ。 お前も同類だろ」
ぼんやり笑って呟いた李緒に、和希も笑って答える。
俺達は、親への反抗だと少しの力で逆らって、それでもどうにか足掻いて生きてる。
李緒が新入生代表を務めた入学式は、そのあと何の問題もなく終わり、クラス発表も終わった。
講堂脇の掲示板での一斉貼り出し。
俺達3人は“また”Aクラスだった。
持ち上がりだし、分かってたことだったけど。
3人で並んで、高等部校舎の1-Aを目指して歩けば、女子は群がってくる。
毎度お馴染みって奴だ。
「毎度毎回飽きねーのかな、うるせーし」
本当嫌になるね。
騒ぐ女は嫌いだ。
まぁ、女自体そんなに好きな方じゃないんだけど。
「まぁまぁ。 カリカリするなよ」
李緒は外面がいいからそんなの微塵も出さないけど。
あと、和希も滅多に表情や口には出したりしない。
あいつはポーカーフェイスが売りだからな。
それがかっこいいっつって、人気を博しているそうで。
女の好みはよくわからねえ。
あれ、一歩間違えたら冷たいって言われて終わりだろ。
「カリカリじゃねえよ。 イライラだ」
「尚更タチ悪いって、蒼太」
お前と違って腹ん中が分かんねえよりマシだろ。
俺は自分に正直に行動してるだけだし。
自分に素直に正直に。
そんな俺の、教室までくらい静かに行きたいっていう細やかな願いは、無残にも崩れた訳で。
ずーっと黄色い声の花道だぜ?
耳がキンキンするわ。
「おーっす、遅かったな」
「永岡くん達は仕方ないでしょ」
教室に入れば、中等部からの顔見知りから声がかかる。
よく馴染んだトーンにようやく人心地がついた。
「今年もみんなとでよかったよ。 また色々とよろしくねー」
李緒はそういって、殆ど空の鞄を机の脇にかけた。
教室の席は埋まり始めていた。
担任が来るまでの少しのフリータイム、特に何もせずに席に着いて待つ。
李緒は携帯、和希は文庫本を取り出した。
ちなみに俺達の席はそこそこ離れている。
俺の席は窓際の前から3番目、日当たりのいい席で、昼寝にも最適だ。
1年は4階だから見晴らしもいいし。
初期の席とは言え、ベストポジションゲットだな。
最初のコメントを投稿しよう!